The Things Stack Cloud で Packet Brokerの恩恵を受けてみる
今回は、Packet Broker によるピアリング(トラフィックの交換)がどのようなものか、実際に動作を確認してみましたので、共有させていただきます。
Packet Broker とは?
The Things Stack の公式ドキュメントのPacket Brokerに説明があります。以下、冒頭だけ抜粋します。
Packet Broker uses LoRaWAN® peering to exchange traffic with other LoRaWAN networks to share coverage and improve the overall network performance.
直訳ですが、次の通りです。
Packet Broker は、LoRaWAN® ピアリングを使用して、他の LoRaWAN ネットワークとトラフィックを交換し、カバレッジを共有し、ネットワーク全体のパフォーマンスを向上させます。
The Things Stack Cloud で試す
この Packet Broker の機能を確認する方法として、手っ取り早く低コストなのは、The Things Industries 社が提供するクラウド版 LoRaWAN サーバである The Things Stack Cloud を利用することです。
実は、The Things Stack Cloud は無償版があります。ユーザ 1 名、デバイス/ゲートウェイが 10 台までであれば、さまざまな機能を無償で試すことが可能です。
さらに、The Things Stack SANDBOX(旧 The Things Stack Community Edtion)を使ったことがあるユーザであれば、UI/UX が同じですので、簡単に使い始めることが可能です。
The Things Stack Cloud でアカウントを作成し、Web コンソール画面にいき、管理パネルに行くと、Packet settings というメニューがあります。
ここで、Packet Broker サービスにより、パケット交換する相手をどこにするのかを設定することができます。
この画面には、LoRaWAN における Peering 機能を使うべきかが記載されています。
Since LoRaWAN uses shared spectrum, gateways receive messages from devices registered on other LoRaWAN networks. Instead of discarding this traffic, these messages can be forwarded via Packet Broker to the home network of these devices. This extends coverage of networks and allows devices to use higher data rates that reduce channel utilization and increase battery life. No sensitive data is exposed as LoRaWAN is end-to-end encrypted and integrity protected.
直訳すると、次の通りです。
LoRaWAN 網では波長スペクトルを共有しているため、ゲートウェイは他の LoRaWAN ネットワークに登録されているデバイスからのメッセージを受信します(できます)。このトラフィックを破棄する代わりに、これらのメッセージを Packet Broker 経由でデバイスのホームネットワークに転送することができます。これにより、ネットワークのカバレッジが拡大し、デバイスはより高いデータレートを使用できるようになるため、チャネルの使用率が下がり、バッテリーの寿命が延びます。LoRaWAN はエンドツーエンドで暗号化され、完全性が保護されているため、機密データが漏洩することはありません。
分かったようで、なんだかわからない・・・
以下の環境のもとで、実験してみることにしました。
- 自社独自の LoRaWAN 網を、The Things Stack Cloud で構築している(図の左側)とします。
- ゲートウェイ GW1 とデバイス Dev1 が登録されているとします。
- また、実験用として、The Things Stack SANDBOX (図の右側)を利用しているとします。
- こちらにも、ゲートウェイ GW2 とデバイス Dev2 が登録されているとします。
実験
実験では、次のような状況を想定します。
Dev1 が、GW1 だけでなく、GW2 と通信可能な距離にあるとします。 このとき、The Things Stack SANDBOX 網経由で、自社デバイス Dev1 のパケットが、自社網側に届けば、すごくハッピーです。
ちなみに、このようなケースで、左側をホームネットワーク、右側をフォワーダと呼ぶそうです。
では、実験です。
Packet settings というメニューに「Setup > Enable Packet Broker」のトグルが ON になっていることを確認してください。
この環境下で、The Things Stack Cloud の管理画面で、当該 Dev1 のパケットが見られるのか確認してみました。
想定通り、左(ホームネットワーク)側のコンソールで、右(フォワーダ)側のゲートウェイ GW2 を経由してデータが届いていることが確認できます。
これは、非常にハッピーです。もし GW1 が故障して動いていない場合、あるいは Dev1 が想定外の場所に行ってしまった場合でも、近くにコミュニティとして利用が広がっている The Things Stack SANDBOX のゲートウェイ(ここでは、GW2 を想定)があれば、Dev1 の通信を拾うことができるからです。
Peering Settingsを使いこなせれば、世界の同志と共に素敵な LoRaWAN 網が構築できてしまうわけです。まだまだ理解は浅いですが、Packet Brokerの威力を確認することができました。