miro Alarmで実現!LoRaWAN ClassCデバイスの遠隔アラート制御システム
はじめに
IoT システムにおいて、センサーからのデータ収集(アップリンク)だけでなく、デバイスへのコマンド送信(ダウンリンク)も重要な要素です。特に、現場の状況に応じてリアルタイムに警告を発することができれば、安全管理や業務効率化に大きく貢献します。
当社では現在、スイスの miromico 社との協業で、LoRaWAN ClassC で動作するmiro Alarmの日本市場への展開を計画中です。
miro Alarm は USB 給電で動作し、LoRaWAN のダウンリンクコマンドに従って、事前に定義したアラートシーン(LED の光り方、音の出方)を実行できるユニークなデバイスです。
今回は、この miro Alarm を活用した3 つのデモシステムをご紹介します。各デモでは、センサーの状態に応じて LED の色が変わるアラートを実現しています。
miro Alarm とは?
製品ラインナップ
miro Alarm には3 種類のモデルがあります。
- LED のみ:視覚的なアラート表示
- Buzzer 付き:LED + ブザー音によるアラート
- HSP(High Siren Power)付き:LED + 音圧サイレンによる強力なアラート
写真左上が、miro Alarm HSP(High Siren Power)です。写真右上が miro Alarm Buzzer です。
ちなみに、写真下部が、Dragino PB05-L です。
どうでもいいですが、遠くから眺めると人の顔みたいな写真ですね。
主な特徴
- LoRaWAN ClassC 対応:常時受信待機状態で、即座にダウンリンクコマンドを受信可能
- USB 給電:安定した電源供給で長時間動作
- カスタマイズ可能なアラートシーン:LED の光り方、音のパターンを事前に設定可能
- LoRaWAN インフラ活用:既存の LoRaWAN ネットワークにそのまま統合可能
以前のブログ「熱中症対策 IoT:LoRaWAN 温度湿度センサーと LED ストロボサイレンの連携システム」で、同じように LED ストロボサイレンを使ったシステムをご紹介しました。実は、見た目はほぼこれと同じです。大きな違いは、今回の miro Alarm を使うことで、LoRaWAN 環境だけで実現できるという点です。つまり、システムが複雑にならずに済むということです。
やはり、違いがわかる大人になりたいですね。
LoRaWAN ClassC の重要性
通常の LoRaWAN デバイス(ClassA)は、アップリンク送信後の短い受信ウィンドウでのみダウンリンクを受信できます。これに対し、ClassC デバイスは常時受信待機状態を維持するため、リアルタイムにコマンドを受信できます。
これにより、センサーの状態変化を検知してから数秒以内にアラートを発動させることが可能になります。
システム構成
今回実装した 3 つのデモシステムは、以下の共通構成を持ちます。
使用機器
センサーデバイス
- デモ 1:Dragino PB05-L - 5 ボタン搭載センサー
- デモ 2・3:ELmote EM-ELHT01 - 温度湿度センサー(外付けプローブ対応)
アラートデバイス
- miro Alarm HSP(都合で、音は出していません)
インフラ
- LoRaWAN ゲートウェイ(オフィス設置)
- LoRaWAN サーバー(欧州)
- アプリケーションサーバー(日本)
データフロー:驚きの世界旅行
今回のデモのもう一つの醍醐味は、データが日本と欧州の間を往復することです。
センサー(日本)
→ ゲートウェイ(日本)
→ LoRaWANサーバー(欧州)
→ アプリケーションサーバー(日本)
→ LoRaWANサーバー(欧州)
→ ゲートウェイ(日本)
→ miro Alarm(日本)
この「データの世界旅行」を経ても、センサー検知からアラート発動までの遅延は数秒程度。LoRaWAN とインターネットインフラの性能を実感できます。
デモ 1:5 ボタンセンサーによる色分けアラート
概要
Dragino PB05-Lは、5 つのボタンを搭載した LoRaWAN センサーです。各ボタンが押されたことを検知し、アップリンクで通知します。
動作内容
miro Alarm には、事前に 4 つのシーンを登録しています。デモでは、シーン 2 とシーン 3 が、ボタンの押下に応じて実行されます。
- ボタン 1:白色 LED 点灯
- ボタン 2:青色 LED 点灯
- ボタン 3:オレンジ色 LED 点灯
- ボタン 4:赤色 LED 点灯
応用シーン
- 製造ラインの状態表示:各工程の完了をボタンで通知、対応するエリアで LED 点灯
- 会議室予約システム:予約状態を色で表示
- 緊急呼び出しシステム:場所ごとに異なる色で呼び出し元を特定
デモ 2:接点センサーによるアラート制御
概要
EM-ELHT01は、外付けプローブを差し替えることで、機能追加が可能です。このデモでは接点プローブを接続し、接点の開閉状態を検知します。接点の状態に応じて LED の色が変わります。
動作内容
- 接点 CLOSE:赤色 LED 点灯
- 接点 OPEN:青色 LED 点灯
応用シーン
- ドア・窓の開閉監視:侵入検知、防犯対策
- 機械の稼働状態監視:稼働中/停止中を遠隔表示
- 水位センサー連携:フロートスイッチと組み合わせて水位異常を通知
デモ 3:ADC センサーによる電圧レベル判定アラート
概要
EM-ELHT01にADC プローブを接続すると、0.1 - 1.1V の電圧を検知することが可能です。このデモは、検知する電圧値に応じて LED の色が変わります。
動作内容
- 0 ~ 0.7V:無灯(※デモでは実験準備段階の白色が点灯していますが、ご容赦を)
- 0.7-0.9V:オレンジ色 LED 点灯
- 0.9V 以上:赤色 LED 点灯
応用シーン
- バッテリー電圧監視:電圧低下を段階的に警告
- アナログセンサー連携:照度、圧力、流量などのアナログセンサーと組み合わせ
- 環境モニタリング:土壌水分、pH 値などの連続値を段階表示
実装のポイント
1. LoRaWAN サーバーとの連携
アプリケーションサーバーは、The Things Stack や ChirpStack などの LoRaWAN サーバーの MQTT/HTTP インターフェースを通じて、アップリンクデータを受信し、ダウンリンクコマンドを送信します。
2. アラートシーンの事前設定
miro Alarm では、複数のアラートシーン(LED の色、点滅パターン、音のパターン)を事前に設定しておき、ダウンリンクコマンドでシーン番号を指定するだけで動作させることができます。
3. ClassC の消費電力
ClassC デバイスは常時受信待機するため、バッテリー駆動には向きませんが、USB 給電により安定した運用が可能です。設置場所に電源があれば、長期間メンテナンスフリーで動作します。
システムの拡張性
今回のデモシステムは、以下のような拡張が可能です。
複数センサーの統合
複数のセンサーからのデータを統合し、複雑な条件でアラートを制御できます。
例:
- 「温度が 30℃ 以上 かつ 湿度が 80%以上」で赤色アラート
- 「ドアが開いた かつ 営業時間外」で警報サイレン
他システムとの連携
- Slack/LINE 通知:アラート発動時に通知
- カメラ連携:アラート発動時に自動撮影
- 空調制御:環境センサーと連携して自動制御
まとめ
今回は、miro Alarm を活用した 3 つの LoRaWAN アラートシステムをご紹介しました。
- LoRaWAN ClassC によるリアルタイムダウンリンク制御
- 多様なセンサーとの組み合わせが可能
- データが世界を旅しても数秒で応答
- 既存の LoRaWAN インフラをそのまま活用
- USB 給電で安定した長期運用
LoRaWAN のアップリンクとダウンリンクを組み合わせることで、センシングだけでなく、現場への即座のフィードバックを実現できます。これにより、IoT システムの可能性は大きく広がります。
miro Alarm の日本市場への展開については、引き続き情報を発信してまいります。製品に関するお問い合わせは、当社お問い合わせフォームまでお気軽にご連絡ください。
また、今回使用した Dragino PB05-L や ELmote EM-ELHT01 は、当社 EC サイトでもお取り扱いしております。
皆様の IoT プロジェクトに、miro Alarm がお役に立てれば幸いです。
※なお、本件は、「総務省 技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」への申請に基づき、実験を行なっております。