実力派!LT22222-Lで実現する遠隔リレー制御の魅力
はじめに:目立たない存在だが実力派のデバイス
IoT 機器の世界では、センサーデバイスに注目が集まりがちです。しかし、今回ご紹介する Dragino 社のLT22222-Lは、少し異なるアプローチを取っています。このデバイスは、2 つのリレー出力を搭載し、LoRaWAN を使った遠隔制御を得意とする、いわば制御系のスペシャリストです。

見た目は地味で、派手な機能はありません。しかし、実際に使ってみると、その実力に驚かされます。特に、LoRaWAN Class A & Class C modes をサポートし、リアルタイム制御が可能な点は大きな魅力です。
LT22222-L の基本仕様と特徴
LT22222-L の主要な特徴を簡潔にご紹介します:
制御系機能
- 2 x Relay Output (5A@250VAC / 30VDC) ← これが最大の魅力
- 2 x Digital Output (NPN output)
監視系機能
- 2 x Digital Input / 2 x Analog Current Input / 2 x Analog Voltage Input
通信・電源
- LoRaWAN Class A & Class C modes ← リアルタイム制御の要
- Power Input 7~ 24V DC(常時電源供給必要)
Class C 通信の威力が、このデバイスの最大の差別化要因です。通常の Class A デバイスは送信後の短時間のみダウンリンクを受信しますが、LT22222-L は常時受信待機状態のため、コマンド送信から実行まで数秒で完了します。
実装例:LoRaWAN 撮影制御システム
LT22222-L の実力を示すため、実際に構築した遠隔撮影制御システムをご紹介します。
要するに、遠隔でシャッター操作 をLoRaWANで行うというものです。
このシステムでは、2 つのリレー出力を活用して、照明とカメラを独立制御する仕組みを実装しました。
さらに、画像を扱うので、少しユニークな構成としました。カメラから静止画をクラウド側へアップロードする部分の通信は、 LoRaWANと同じLPWANの一つであるLTE Cat.M1(LTE-Mとも呼ぶ)を利用しています。
このハイブリッドアプローチにより:
- 制御:LoRaWAN(低消費電力・リアルタイム・長距離)
- データ:LTE-M(高帯域・全国カバレッジ)
という適材適所の通信方式選択を実現しています。
ハイブリッドLPWAN、技術の無駄遣い感は否めない?
LTE-Mの低消費電力モード(PSM、eDRX)を利用すればいいじゃん!って声も聞こえたり、、、
システム概要
今回の実装例では、次のことが可能です。
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ユーザは、Web UIで、LT22222-Lと繋がった①LEDライトと②LTE-M通信機能付きカメラデバイスを操作できます。
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「撮影開始ボタン」をクリックすると、①と②の電源が同時にONとなります。つまり、LT22222-Lの2つのリレーをONにします。
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そうすると、①は点灯し、②は静止画を撮影しLTE-M通信を使ってアプリサーバに画像をhttps POSTします。②のデバイスは、1分おきに、静止画を撮影してサーバへ画像をアップロードするようにプログラムされています。
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「撮影終了ボタン」をクリックすると、即座に①だけOFF(消灯)になります。②のカメラは電源が入り続けますが、1分したら電源OFFになるようにしました。これにより、①が消灯した画像が、このタイムラグ後に②で撮影されアップロードされます。
システム構成を絵で描くと次のようになります。
実写(一部)
実際の実験装置の写真です。
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リレー1(RO1)に繋ぐもの: LEDランプ(実は電磁誘導コイルで磁界を発生させ、それに反応するLEDランプを利用)
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リレー2(RO2)に繋ぐもの: LILYGO T-SIM7080G S3 + OV2640 カメラ + soracom SIM + 自作ファームウェア
mermaid版 システム構成図
graph TB subgraph "制御・管理層" NodeRED[Node-RED Dashboard 2.0
- 撮影開始/終了ボタン
- デバイス状態表示
- 画像表示機能] TTS[The Things Stack
- LoRaWANネットワーク管理
- デバイス制御] end subgraph "現場機器" LT22222[Dragino LT22222-L
LoRaWANリレー制御デバイス] LED[LEDライト
撮影時照明] CAMERA[LTE Cat.M1カメラ
自動撮影・画像送信] LT22222 --> |リレー1| LED LT22222 --> |リレー2| CAMERA end NodeRED --> TTS TTS --> |LoRaWAN| LT22222 CAMERA --> |LTE| NodeRED classDef controlLayer fill:#e1f5fe classDef deviceLayer fill:#fff3e0 class NodeRED,TTS controlLayer class LT22222,LED,CAMERA deviceLayer
画面で動きを説明します
何はともあれ、画面を使って説明するとわかりやすいかもしれません。
1. 初期状態では、2つのリレーがOFFの状態
2. 「撮影開始ボタン」をクリックし、即座に2つのリレーがONになる
3. 少し待つと、LTE-M通信で画像を受信(画像で、LEDが点灯していることがわかる)
4. 受信した画像全体を表示
5. 「撮影終了ボタン」をクリックし、リレー1が先にOFFとなり、リレー2がONのまま
6. 少し待つと、画像を再度受信(画像で、LEDが消灯していることがわかる)
7. 少し待つと、リレー2がOFFとなる(つまり、LILYGOの電源が切れる)
まとめ:目立たないが確実に仕事をするプロフェッショナル
LT22222-L は、確かに目立たない存在です。派手な AI 機能もなければ、最先端のセンサー技術もありません。しかし、「遠隔でリレーを確実に制御する」という基本的で重要な機能を、LoRaWAN の特性を活かして実現している点で、非常に価値のある製品だと思います。
LT22222-L が輝く場面
- 長距離での確実な制御が必要な用途
- 拡張性を重視したシステム構築
- コスト削減を重視したプロジェクト
特に、Class C 通信によるリアルタイム制御と2 つのリレー出力という組み合わせは、他の LoRaWAN デバイスにはない独自の価値を提供します。電源が確保できる環境であれば、その実力を十分に発揮してくれる、まさにプロフェッショナルな制御デバイスと言えるでしょう。
今後、IoT システムの普及に伴い、このような制御に特化したデバイスの重要性はさらに高まっていくと予想されます。LT22222-L は、その先駆けとなる存在かもしれません。
なお、LT22222-Lは、当社 EC サイトでもお買い求めいただけます。遠隔制御システムの導入をご検討の際は、ぜひ LT22222-L の活用をご検討ください。
参考情報
- Dragino LT22222-L 公式マニュアル
- The Things Stack 公式サイト
- Node-RED 公式サイト