ITという見えないモノとの協奏曲
少し時間が経ちましたが、第 18 回ショパン国際ピアノコンクール(ポーランド・ワルシャワ開催)で、日本人二人が 2 位と 4 位に入賞という快挙がありました。“マジやばい!“です。同じ日本人として、本当に嬉しく思います。
全く関係ないですが、当社がパートナーである"TakeTask"は、ポーランド・ワルシャワを拠点とする IT スタートアップであり、勝手にご縁を感じるニュースでした。
この"ピアノ”、現在では生まれた頃から身近にあるモノです。幼稚園や保育園の先生が、毎日弾いてくれます。詳しいことは知らない、クラッシックには興味がなくても、このニュースの凄さはなんとなくわかるモノであり、何より彼らの演奏の素晴らしさを、誰もが感じることができるのではないでしょうか?
一方、今や"ピアノ"以上に毎日接しているはずの"IT”。この"IT"は、そもそも指し示すものが非常に抽象的で全貌が見えません。IT 関係者ではない方々にとって、“IT"の理解が難しく、“ピアノ"のようなものとは異質の存在のようです。今回は、なんとなく感じているこの"異質感"について触れてみたいと思います。
1. インタフェースとインタラクション
私は、認知科学の専門家ではないので、科学的根拠に基づいたことは言えません。
ただ、自分自身の経験や、我が子の成長過程の観察から、対象物が何か?を認識する上で、
- 触ってみて
- いじってみて
- どんな反応があるのか観察する
ということを自身の経験として体験し積み重ねることは、非常に重要なことだと思っています。
要するに、我々ホモ・サピエンスは日々無意識レベルで、インタフェースとインタラクションを通じて対象のモノ・コトの実態を把握しているであろう、ということです。
2. ピアノ
“ピアノ"であれば、鍵盤を叩くと音が出て、叩いた鍵盤(場所)によってその音が異なる(低かったり高かったり)という経験ができます。基本的にはこれ以上でもこれ以下でもありません。鍵盤を叩いても、何かお金や家を失ったり、傷つけられたりすることはありません。だから、いつも安心してピアノを弾くことができます。
ちなみに、鍵盤を叩くとなぜ音が出るのか?その原理はわからなくても良いのです。原理がわからなくても、気持ちよくメロディーを奏でることは可能でしょう。
3. 車
“車"はどうでしょうか?車もピアノ同様に、日常的に触れるものです。車は、ピアノほど単純ではありませんが、それでも、
- 加速するにはアクセルを踏む
- 減速するにはブレーキを踏む
- 曲がるにはハンドルを曲がりたい方向に回す
という 3 つの基本的動作を適宜適切に行うことで、移動手段として利用可能です(細かく言えば、いろいろありますが)。教習所では恐る恐るアクセルを踏みますが、運転歴 XX 年にもなれば大胆にアクセルを踏んだりします。これも、"(この車だと)このくらいアクセル踏むと、このくらいの反応で速度が出るのだ"という経験を通して、安心してアクセルを踏んでいるのです。
車は非常に複雑な仕組みで構成されていますが、例えば、デファレンシャルギアの仕組みを知らなくても、安全にかくも高速にコーナーを曲がることができます。
これは、非常に素晴らしいことです。原理はさておき、実用的に活用ができる道具。我々は、過去の数多の巨人の肩に乗り、便利な生活を楽しんでいます。
4. IT サービス
“IT"はどうでしょうか?
日常的には、パソコン・タブレット・スマフォの画面を通じて"IT"に触れることがほとんどだと思います。この業界に関係のない方々にとって、
と言っても過言ではないかもしれません。多少大袈裟ではありますが、大嘘ではないかと。
この「パソコンとスマフォの画面に映る」ものをあらためてじっくり見てください。対象物が何か?を何を頼りに理解しようとするでしょうか?
- アイコン
- 色
- デザイン
- ボタンの名前・位置
などなど、頼りにするものは沢山あります。
問題なのは、TV リモコン以上に、クリックやタップするボタンが多かったり、何かを入力する部分が多かったりすることです。多いだけならいいのですが、そのサービス(アプリ)毎に、場所や色や説明文言や意味が異なります。また、何かクリックしてみないと、反応が分かりません。反応がわからない=怖い、そのためにいじろうとしない。そんな悪循環により、対象が何なのかがわからないまま、という場面を多く見かけます。
ソフトウェアという言葉通り、どうにでも作れてしまうために、各種サービス(アプリ)でそれぞれ作ることになるので、こんなことになってしまいます。
IT サービスを企画・開発・提供する立場としては、非常に悩ましく反省すべきことだと思っています。しかし想定ユーザが多種多様となると、答えがないようなものです。
5. ヒント
常々、そう感じているわけですが、ある時、IT 業界でない人と話しているときに気付かされたことがありました。
そう、LINE は、日本においては、ほとんどのスマフォユーザが使っていると言っても過言ではありません。老若男女、身近にいる後期高齢者でも不思議なくらい昔からあったが如く使っています。
ここに、非常に面白いヒントが隠されていると感じました。今さらですが、LINEの基本的なインタフェースは「会話」を模した直感的なもので、だからこそ人々に受け入れられているのでしょう。
用途が異なるとは思いますが、ビジネス用チャットツールのインタフェースに難しさを感じる人だって存在することを思えば、シンプルさを保つことが如何に大切であるかを示す好例であるように思います。例えば機能的には、LINEに通知を飛ばすのも、その他のチャットツールに通知を飛ばすのも同じですが、IT業界から離れたら"同じ"とは受け取られない可能性があるわけです。
ある大先輩の言葉が頭をよぎります。
まさに、このことを肝に銘じて、日々ご提供するシステム/サービスを検討していきたいと考えております。