LoRaWANボタンで即座に印刷!Dragino PB05-LとATOM Printerで作る物理通知システム
はじめに
これまでの記事では、IoT センサーデータの印刷やセキュリティアラートの物理出力など、デジタルデータをあえてアナログ出力する価値についてご紹介してきました。
今回は、この「デジタル × アナログ融合」シリーズの第 3 弾として、当社で新たに取り扱いを開始した Dragino 社製PB05-Lを使った実装例をご紹介します。
「ボタンを押したら、プリンタから紙が出る」
シンプルすぎる?いえいえ、このシンプルさこそが、現場で求められている機能なのです。
今回も、まずは動画をご覧ください。
Dragino PB05-L とは
製品概要
Dragino PB05-Lは、5 つのボタンを搭載した LoRaWAN 対応のワイヤレスボタンデバイスです。
- 5つの独立したボタンを搭載
- LoRaWAN Class A対応
- 長距離通信
- アルカリ単三電池2本で駆動・長期間稼働
- IP52
- コンパクトサイズ(143 x 58 x 26m)
※電池は商品に付属しません。
なぜ PB05-L なのか
世の中には様々なワイヤレスボタンがありますが、PB05-L には以下の強みがあります。
- 長距離通信:Wi-Fi や Bluetooth と違い、建物全体や広大な敷地をカバー
- 低消費電力:電池交換の手間を最小限に
- 5 つのボタン:複数の用途を 1 台でカバー
システム構成
今回実装したシステムの構成は以下の通りです。
Dragino PB05-L(5ボタンLoRaWANデバイス)
↓ ボタン押下
LoRaWANゲートウェイ
↓ LoRaWAN通信
LoRaWANサーバー(The Things Stack)
↓ Webhook/Integration
アプリサーバ(データ整形)
↓ MQTT Publish
MQTT Broker
↓ MQTT Subscribe
ATOM Printer(サーマルプリンタ)
↓ 印刷出力
物理的な通知レシート
PB05-L の Uplink データ
PB05-L は、各ボタンに 1〜5 の番号が割り当てられており、押下時に以下のようなペイロードを送信します。
{
"Alarm":"FALSE",
"BatV":3.183,
"Node_type":"PB05-L",
"Sound_ACK":"OPEN",
"Sound_key":"OPEN",
"key1":"YES",
"key2":"No",
"key3":"No",
"key4":"No",
"key5":"No"
}
ちなみに、ブザー音も鳴ります。
活用シーンの提案
このシンプルなシステムは、想像以上に多くの場所で活用できるはずです。
1. 飲食店での活用
飲食店では配膳以外は、全てデジタル機器を使うのも普通かもしれませんね。 配膳すらロボットのお店もありますね。
- ボタン1:「お水のおかわり」
- ボタン2:「注文したい」
- ボタン3:「お会計」
- ボタン4:「お手拭き」
- ボタン5:「スタッフ呼び出し」
キッチンのプリンタから即座に要求が印刷され、スタッフが見逃すことなく対応できます。
印刷例:
================================
BUTTON 2 PRESSED
================================
Time: 2024/12/20 19:15:32
Battery: 3.5V ✓ OK
Table: #12
Request: 注文したい
--------------------------------
デモで出力したもの(実物)
2. 病院・介護施設での活用
- ボタン1:「緊急」(赤)
- ボタン2:「薬が欲しい」
- ボタン3:「トイレ介助」
- ボタン4:「体調不良」
- ボタン5:「その他の要望」
ナースステーションで要求内容が即座に印刷され、優先順位をつけて対応できます。
3. 学校や塾での活用
- ボタン1:「質問があります」
- ボタン2:「もう一度説明してください」
- ボタン3:「休憩が必要」
- ボタン4:「資料が足りません」
- ボタン5:「技術的な問題」
職員室のプリンタに通知が届き、サポートスタッフが迅速に対応できます。
4. 工場・倉庫での活用
- ボタン1:「部品補充」
- ボタン2:「機械トラブル」
- ボタン3:「品質確認要請」
- ボタン4:「作業完了」
- ボタン5:「緊急停止」
管理事務所で即座に状況を把握し、適切な対応が可能です。
5. オフィスでの活用
- ボタン1:「会議延長希望」
- ボタン2:「機材トラブル」
- ボタン3:「清掃依頼」
- ボタン4:「空調調整」
- ボタン5:「緊急連絡」
総務部門で要求を即座に把握し、快適な会議環境を維持できます。
導入のメリット
1. 圧倒的なシンプルさ
「ボタンを押すだけ」という操作は、年齢や技術レベルを問わず、誰でも使えます。スマートフォンアプリや複雑な UI は一切不要です。
2. 確実な伝達
物理的に印刷されることで、通知の見逃しがありません。デジタル通知と違い、「紙が出ている = 対応が必要」という明確なサインになります。
3. 記録の自動化
すべての要求が時刻付きで印刷されるため、後から対応履歴を確認できます。サービス品質の向上にも貢献します。
4. 柔軟な設置
LoRaWAN の長距離通信により、Wi-Fi の届かない場所でも設置可能。配線工事も不要で、既存施設への導入が容易です。
5. 低ランニングコスト
電池寿命が長く、通信料も不要。初期投資のみで長期間運用できます。
まとめ
Dragino PB05-L と ATOM Printer を組み合わせた物理通知システムは、「ボタンを押したら紙が出る」という極めてシンプルな仕組みです。
しかし、このシンプルさこそが最大の強みです。
- 誰でも使える直感的な操作
- 見逃しのない確実な通知
- 柔軟な設置と用途展開
- 低コストでの導入・運用
デジタル技術が進化する中で、あえて物理的な出力を選ぶことで、新たな価値を生み出すことができました。
- 音声読み上げとの連携
- 複数プリンタへの同時出力
- クラウド連携による統計分析
- AIによる要求パターンの学習と予測
- スマートフォンアプリとの併用
「IoT Printer」シリーズとして 3 つの実装例をご紹介してきましたが、いずれも「デジタルとアナログの融合」がテーマです。最新技術と従来の方法を組み合わせることで、現場の本当のニーズに応える実用的なソリューションを生み出すことができます。
Dragino PB05-L は、当社 EC サイトでもお買い求めいただけます。また、本記事で紹介したシステムの構築支援も承っております。お気軽にお問い合わせください。
皆さんの現場でも、このような「シンプルだけど強力」なソリューションを検討してみてはいかがでしょうか?