インフラを守る〜その1
3年前の「熱海市伊豆山土石流災害」は、まだ記憶に新しいかもしれません。ここ数年において、盛り土や傾斜地が崩れることの恐ろしさを知った災害の一つだと思います。7月12日未明に松山市で発生した土砂崩れも大きなニュースになりました。盛り土や傾斜地の土砂崩れは、この日本において大きな社会課題になっています。その証拠に(?)、今年度になって、当社にもすでに数件、同様の相談が国内外から入っています。
その中で、当社オリジナルの LoRaWAN デバイス EM-ELST01を用いた実験を、簡単にご紹介したいと思います。
背景
課題オーナーは、自治体、あるいはその関連団体ということがほとんどです。今回のお題は以下のような感じでした:
- 盛り土がある
- 目視による定期的な確認はしている
- 定量的な評価と人的リソースの有効活用が課題
要するに、生産労働人口減少の大きなトレンドの中、「人的リソースとノウハウに依存しない、低コストで、常時、定量的なモニタリングをしたい」ということが根源的なニーズだと認識しています。
設置
今回の実験では、対象が盛り土です。サッカー場半分++くらいの面積があり、その中に、(予算の関係もあるので)当社のオリジナルデバイス EM-ELST01 を10箇所設置しました。
EM-ELST01 は、加速度センサーを具備しています。定期アップリンクに、X-Y-Z 軸方向の加速度値が含まれます(詳細は、公式マニュアルをご覧ください)。
地面に対して、それなりの深さで固定した場合、もし、この X-Y-Z 軸の加速度値に少しずつ変化があれば、それはデバイスが傾いていることを意味します。すなわち、 “もしかしたら盛り土が動いている” 可能性があるわけです。
このような観点で、もちろん学術的な研究や産官学による実証実験は行われています。例えば、土砂崩れを再現!東京で大規模な実物大実験を実施【愛媛大学・京都大学|実装報告】は、非常に興味深い内容です。
データの可視化
いつも通り、センサーデータを可視化するダッシュボードを作ります。
左上には設置場所の写真(設置当時)を表示。センサーデータとしては、デバイス毎に、電池電圧、温度、XYZ 方向のそれぞれの加速度値の時系列グラフを表示しています。
時系列グラフの古い部分は、実験環境の準備期間のデータで、嘘データです。右側赤枠が実際の設置後のデータです。定期インタバルは 1 時間。基本的には、ずっと同じ状態です。これを、涼しいオフィスで眺めるだけで、現場へのチェックは基本的には不要になるはずです。センサー側の温度データを見ると過酷な暑さ(40℃ 超え)です。現場へは、なおさら足が遠のいてしまいますね。
これからどのようなデータが取れて、どのように活用ができるのか?少し長い期間の実験をしていきたいなぁと思っています(課題オーナー次第ですが)。
世の中には、(やったほうが効用があるとわかっていても)定量的にデータが可視化できていない、あるいは遠隔監視ができていないことが山ほどあると思います。そんなことに、このような技術が役立てられたら良いなぁと思います。
ちなみに、IoT センサーだけでは、モニタリングできる領域というか面積に限界があります。そのような場合は、当社も技術開発を進めている衛星データを活用したリモートセンシング技術と掛け合わせることで、より広範囲により正確に地面の状況を捉えることが可能だと考えています。ぜひ、当社リモセンブログも併せてご覧ください。
なお、当ブログで登場した当社オリジナル LoRaWAN デバイス EM-ELST01 は、当社 EC サイトでもお買い求めいただけます。
よろしくお願いいたします。