JJY復調状況チェッカの製作
JJY電波を使用してRTCを校正する
正確な時刻を必要とする電池駆動のIoT機器を実現する際には、時刻の正確性と、正確性を保つための消費電力をうまくバランスさせる必要があります。IoT機器の持つRTC(Real Time Clock)を校正するには、ネットワークやGPSから時刻を取得する方法がありますが、ネットワーク遅延による時間遅れや、消費電力の点で難点がありました。
そこで腕時計でも使用されているJJY電波を受信する方法に着目しました。一方JJY電波を正しく復調するには、受信場所、受信時刻、アンテナ(一般に指向性のあるフェライトバーアンテナが使用されている)の向きを正しく設定する必要があります。そこで復調状況を把握して正しい設定ができるようにJJY復調状況チェッカを製作してみました。
復調波形を目視できるようにする
復調状況を直感的に把握するには、復調波形を目視できるようにすることが最も良いと思いました。そこでネットで紹介されているポータブルで簡易なオシロスコープとJJY受信モジュールを組み合わせて実現することにしました。復調信号の周期は1秒なので高速性は必要ありません。簡易なオシロスコープとしては以下の2種類を試してみました。またJJY受信モジュールには以下を使用しました。
ポータブル簡易オシロスコープ
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http://radiopench.blog96.fc2.com/blog-entry-1027.html
ラジオペンチさんの0.96インチの128×64ドット有機ELディスプレイ(OLED)にarduinoUNOで信号波形を表示させる「Arduinoで作るオシロ」です(写真1)。
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https://oscilloscope.fhdm.xyz/
FHDM TECHのScoppy-Oscilloscopeです。ラズパイpicoで信号処理をしてandroidスマホの画面に信号波形を表示します(写真4)。
JJY受信モジュール
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https://www.aitendo.com/product/9148
福島県の「おおたかどや山標準電波送信所」から送信されている40kHzの信号、佐賀県の「はがね山標準電波送信所」から送信されている60kHzの信号を切り替えて受信、復調できるモジュールです。
復調波形について
JJY電波の復調信号は図1のようになります(引用元リンク)。
正しく復調されると、各1秒において、以下の3パタンの波形が観測されます。
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0.2秒High、0.8秒Low
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0.8秒High、0.2秒Low
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0.5秒High、0.5秒Low
これ以外の波形が現れるときは、正しく復調されていなく、よって正確な時刻も得られない状態です。これから製作するJJY復調状況チェッカを持って場所やバーアンテナの方向を変えて、正しく復調できる場所や、バーアンテナの向きを探ります。なお時間帯によってもJJY電波の電界強度が変化することにも注意する必要があります(https://jjy.nict.go.jp/fs/index.html)。
OLED+arduinoUNOを使用したJJY復調状況チェッカ
ATMega328Pにarduinoのブートローダを書き込み、マイコンチップ単体でarduinoUNOを構成しました。写真1のように「Arduinoで作るオシロ」を組み立て、これにJJY受信モジュールを結線します。時間軸を最大値に設定すると横軸の端から端までが0.8秒となるので、信号の1周期全体は見れませんが、復調が正常か否かは判断できます。JJY電波を受信して正しく復調されていることの判断は、表示される波形をしばらく観察することで行います。
写真2のように0.2秒以下の幅のパルスが現れる場合には正しく復調できていませんので、受信場所やバーアンテナの向きを見直します。写真3のようにしばらく観察してすべて0.2秒以上のパルスとなる場合には正しく復調できています。
Scoppyを使用したJJY復調状況チェッカ
まずandroidスマホにScoppy-Oscilloscopeアプリをインストールします。ラズパイpicoにはhttps://oscilloscope.fhdm.xyz/wiki/Installation-&-Getting-Startedを参照してファームウェアをダウンロードし、ラズパイpicoにインストールします。ブレッドボード上に写真4のように結線して完成です。なおJJY受信モジュールへの電源供給はラズパイpicoの3.3V出力を4.7kΩの抵抗を介し行っています。スマホからの電源を通したノイズの影響を軽減するためです。こちらのチェッカでは、横軸の1目盛りを1秒に設定すると、10秒分の復調状況が確認できます。
写真5のように0.2秒以下のパルスが観測されず、写真6のような状態であることを確認することで、良好な復調状態であることを知ることができます。
ポータブル化について
以上のように2種類のJJY復調状況チェッカをブレッドボードベースで製作しましたが、今後使いやすさ等を評価して、良い方を基板化してケースに収めフィールドで使えるようにしたいと思います。