学校向け 熱中症&プール管理システムのご提案
はじめに
学校現場においてさまざまな課題が顕在化しています。
先日も「プール給水栓また閉め忘れ およそ15時間にわたって水道水を流出 川崎市の小学校 マニュアル守られず」というニュースが流れていました。現場任せにならない仕組み化が重要になってくると思います。
- グラウンド管理の問題: 夏季における熱中症リスクの増大
- プール管理の問題: 注水の止め忘れによる多額の水道料金の発生
- 教員の負担増: 熱中症対策、プールの衛生管理、注水など人手で管理することによる業務過多
これらの課題を解決するために、IoT技術を活用した自動監視・通知システムの導入を提案します。
1. システム構成
今回実装したシステムの全体像から見ていきましょう。先日ご紹介した熱中症対策IoTの構成を利用し、プールの遠隔監視・管理も可能とした仕組みです。
1.1 使用機器・環境
システム構築に使用する機器と環境は以下の通りです。
センサー・通信機器
- LoRaWAN 対応温度湿度センサー EM-ELHT01
- LoRaWAN 対応開閉スイッチ・振動センサー EM-ELST01
- LoRaWAN ゲートウェイ LPS8N-JP
- LoRaWAN対応各種水位センサー(沈水型水圧式、超音波式、浮き式など)
- LoRaWAN 対応水質センサー WQS-LB
サーバー関連
- LoRaWAN サーバ The Things Stack Sandbox
- アプリケーションサーバと MQTT ブローカー(自社構築)
表示・警報装置
- ダッシュボード(自社構築)
- 必要に応じてLED マトリクスパネルやLED ストロボサイレンも可
1.2 システムアーキテクチャ
このシステムの動作フローは以下のようになっています。
- データ収集: 温度湿度センサー、振動センサー、水温・水質センサーのデータが、LoRaWAN 網を通じてアップリンク
- データ転送: The Things Stack(MQTT Broker 機能内蔵)から、アプリケーション側でセンサーデータをサブスクライブ
- データ処理: 届いたデータの温湿度からアラート判定(熱中症対策)、注水口の振動による注水アラート判定(締め忘れ対策)、水質からアラート判定(衛生対策)
- データ配信: アラート条件に従い、自社 MQTT Broker に対してデータをパブリッシュ
- 表示・警報: ダッシュボードにて表示
- (応用可能)LED マトリクスパネル: 年月日・時間の表示とともに、届いたデータを表示
- (応用可能)LED ストロボサイレン: データの内容に対応するプロファイルに従い、ストロボとサイレンを出力
2. アラートについて
熱中症対策の暑さ指数については前のブログをご確認いただくこととして割愛、本件ではプールについて記載します。
2.1 注水について
振動センサーでの検知: 注水口や水道管の振動を検知することで注水中かどうかの判定を行います。 水位センサーでの検知: 水位の上昇割合や規定値の到達により判定を行うことも可能です。 それぞれ単体でも判定は可能ですが、組み合わせることでより詳細な判定が可能となります。
2.2 pH値について
pH値の適正範囲: 6.8〜7.6(日本の学校保健安全法・衛生基準)から外れた場合にアラートを発報します。
- pH値が低すぎる(酸性): 肌や目への刺激、塩素の揮発による刺激臭の増加
- pH値が高すぎる(アルカリ性): 塩素の消毒効果が低下、肌や目への刺激
2.3 残留塩素について
残留塩素の適正範囲: 0.4〜1.0 mg/L(遊離残留塩素、日本の学校基準)から外れた場合にアラートを発報します。
- 塩素不足(0.4 mg/L未満): 消毒不十分で細菌・ウイルスが残存、感染リスク増
- 塩素過剰(1.0 mg/L超): 肌や目への刺激、呼吸器への影響
3. 実装のポイント
3.1 LoRaWAN センサーの設定
EM-ELST01 は、低消費電力で長期間動作可能なセンサーです。設置が簡単で、電池駆動により電源の確保が困難な場所でも利用可能です。屋外使用にも適しています。センサーの設定では、測定間隔を環境に応じて調整することが重要です。
3.2 MQTT によるデータ連携
システムの心臓部となるのが、MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)プロトコルを使用したデータ連携です。 MQTT の軽量性とパブリッシュ/サブスクライブモデルにより、複数のデバイスへの同時配信が効率的に実現できています。
3.3 LED ストロボサイレンの制御
AXIS D4100-VE Mk II は、ネットワーク対応のストロボサイレンで、MQTT メッセージに応じて異なるプロファイルで動作させることができます。
4. 導入効果と活用シーン
期待される効果
- リアルタイム監視: グラウンドやプールの温湿度、水温、水質の状況を常時把握
- 予防的対策: 見える化や危険な状況になる前の警告により事故や水道代の無駄を防止
- データの蓄積・分析: 長期的なデータ収集により、危険時間帯の特定や対策立案が可能
- 省人化: 人による巡回確認の削減
まとめ
今回は、熱中症対策 IoT システムにプール管理機能を追加したシステムをご紹介しました。 低コストで広範囲をカバーできる LoRaWANと、軽量で柔軟な MQTT プロトコルを組み合わせることで、さまざまな応用が可能であることがお分かりいただけるかと思います。
これまで電源や通信の問題でシステム化が難しかった分野でもIoTによるシステム化が可能となっています。人に依存しないシステムの需要は今後ますます高まることでしょう。現場の安全を守りながら、生産性を維持・向上させるためのツールとして、ぜひご検討ください。
なお、本ブログで使用した各種機器は、当社ECサイトでもお買い求めいただけます。また、システム構築のご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。