衛星画像から群馬県の森林率を推定する
日本は国土の約3分の2が森林である、世界有数の森林大国です。樹木は地球温暖化の防止だけでなく、生物多様性の保全など、私たちの生活に無くてはならない働きをする重要な資源です。今回は群馬県の森林率を、衛星画像から推定できるか評価しました。
衛星画像
オープンデータの光学画像Sentinel-2から、群馬県全域をカバーする画像をダウンロードしました。画像は計2枚で、撮影日はそれぞれ以下のとおりです。
- 2022-11-03
- 2022-11-21
手法
まず、衛星画像から次式で定義されるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)を計算しました。
NDVI = (NIR-RED) / (NIR+RED)
ただしNIRは近赤外光、REDは赤色光の波長の値です。NDVIは0~1の値を取り、値が大きいほど植物の活性度が高いことを示します。従って、NDVIの値で閾値を掛けることで、森林部分を抽出できそうです。閾値選択の参照データとして、SCL(Scene Classification Layer)マップを用いました。SCLは、Sentinelのバンド情報から各ピクセルを下図の12クラスに自動分類するアルゴリズムから作られるマップです。(https://sentinels.copernicus.eu/web/sentinel/technical-guides/sentinel-2-msi/level-2a/algorithm)
NDVIの閾値を{0.05, 0.1, 0.15, …}と変化させた時のそれぞれの森林率が、SCLの’VEGETATION’クラスの割合に最も近くなる値を求めました。
結果
衛星画像、SCL、NDVIをプロットしたものを下図に示します。
衛星画像内の緑地部分は実際にSCLで’VEGETATION’クラスに分類され、高いNDVIを持っていることが分かります。なお、SCLは解像度が低いバンド情報も用いているため、RGBでプロットした衛星画像より解像度が低くなっています。
両画像合わせた群馬県全体でのSCLの’VEGETATION’クラスの割合は59.1%, NDVIは閾値を0.25にした時が最も近く62.7%でした。やや古いですが平成24年に林野庁によって発表された群馬県の森林率が67%なので、それほどずれが大きくない結果となりました。過小評価になった理由として、衛星画像の緑地部分に雲があること、2022-11-21の画像の反射率が悪いことなどが挙げられます。
なお、SCLの’VEGETATION’クラスエリアとNDVI閾値で森林と予測したエリアの一致率をIoU(Intersection over Union)で評価したところ、下記のようになりました。
- 2022-11-03: 0.841
- 2022-11-21: 0.668
特に2022-11-03の画像では高い一致をしています。
まとめ
今回はオープンデータのSentinelを用いて、群馬県の森林率を推定しました。NDVIのみを用いたシンプルな手法ですが、実際の値に近い結果が得られました。改善点として、雲や影の扱いが課題になりそうです。