ドローン画像とAIによるコンクリート壁の検査
ドローンの熱画像と深層学習モデルを使って、コンクリート壁の剥離欠陥を検出するソリューションを紹介します。
(英語版はこちら)
1. なぜ、のり面の検査手法が必要とされるのか?
日本は山が多い国です。そのため、梅雨時の土砂崩れを避けるために、道路沿いや市街地には無数のコンクリート製スロープ(法面、“のりめん"と読む。文中では「のり面」と表記する)が建設されました。
そのほとんどが築40年以上経過し、ひび割れや剥離が見られるようになりました。特に剥離は、セメント片が道路に落下して直接人を傷つけたり、交通事故などにつながる危険性があります(ニュース記事参照)。
現状では、のり面に欠陥がないかハンマーで叩いてチェックする検査手法が一般的です。この方法では専門家である熟練の技術者が、一定の間隔で、のり面に直接ハンマーを打ち込み、音が変化した箇所に剥離欠陥があると判断します。しかし、この作業は時間とコストがかかるうえに、検査できる専門家の数も多くありません。そのため、のり面検査を進める上で課題となっています。
この課題を解決するために、ドローン画像とディープラーニングアルゴリズムを活用した新しい検査方法を提案します。
2. 提案手法と実験結果
遠隔から撮影した画像で問題箇所を判定できれば、のり面検査のコストを下げることができると期待できます。そこで、ドローンを利用することを考えます。今回は、島根県に敷設されているのり面を対象に、ドローンで光学画像と熱画像を撮影しました。剥離欠陥は、欠陥によって熱伝導率が異なるため、熱画像で検出することができます。この違いは、コンクリートと空気の温度勾配が最も高くなる朝夕の時間帯に特に顕著に現れます。
問題箇所の判定には、ディープラーニングによる画像分析技術を利用します。ディープラーニングアルゴリズムを訓練するために、熱画像と光学画像をマッチングさせ、アルゴリズムに与える情報量を増やしました。アルゴリズムを訓練するために、専門家による打音検査の結果を用いて、トレーニングデータにラベルを付けました。
約100枚の限られた画像でモデルをトレーニングした結果、検証画像で7/8の剥離領域を検出することができました(図1参照)。このことから、本アルゴリズムは、熱画像において、人間の目では認識できない不良箇所を発見できることがわかりました。
3. 結論
全体として、このアプローチは非常に有望であると考えます。現在のモデルを用いて、のり面の事前検査を行うことで、打音検査の労力を軽減することができるでしょう。また、AIアルゴリズムをさらに訓練し、調整することで、これまでの検査方法の一部を代替できるかもしれません。今後は、パートナーのドローンクリエイト様と一緒に、この検査方法をさらに発展させたいと考えています。