IAC2022参加報告
9月にパリで開催された国際学会IAC2022に参加してきました。当日の学会の様子と得た知見を紹介します。
IACとは
IAC(International Astronautical Congress)とは、毎年秋に開催される宇宙分野で最大規模の国際学会で、世界各国から6000人以上が参加します。航空宇宙分野の参加者が多く、各国の宇宙機構・大学・企業などから数多く参加します。
Opening Ceremony
学会初日はまずオープニングセレモニーがあり、大広間に集まって開会の挨拶がありました。 その後メインスポンサー企業社長やCNES理事、フランス首相らが登壇してスピーチをしました。他にも宇宙産業展望のビデオ上映や歌唱、ダンスなど興味深いパフォーマンスもあって楽しめました。
Technical Session
テクニカルセッションは毎日行われるメインイベントで、大学・研究機関・企業の研究者やエンジニア、学生が研究成果やプロジェクト報告、今後の展望などを発表します。分野は大きく分けて下表のようになり、それぞれがさらに中分類に分かれます。
A | SCIENCE AND EXPLORATION |
B | APPLICATIONS AND OPERATIONS |
C | TECHNOLOGY |
D | INFRASTRUCTURE |
E | SPACE AND SOCIETY |
全体で何百という発表数のため同時進行で行われ、全てを聞くことは不可能ですが、当社が最も関心のある地球観測衛星のIAF EARTH OBSERVATION SYMPOSIUMを聴講しました。衛星開発や今後のプロジェクト展望の発表が多かったですが、アプリケーション利用として、イスラエルの ASTERRAという会社の発表を紹介します。
IAC-22.B1.5.6 SOIL MOISTURE MAPPING BASED ON L-BAND SAR TECHNOLOGY
地滑りなどの災害予測のために、土壌の水分量を把握することは重要な社会課題です。これをレーダーを使った人工衛星SAR(Synthetic Aperture Radar)を用いて検知しました。Lバンドの電波は水分のある領域で反射率が異なり、土壌水分量と強い相関があります。そこで膨大なデータを集めて学習し、他の領域でバリデーションしたところ、モデルが予測した個所で実際に高い水分量が検知され、地滑りが起こったとのことです。
このように衛星を社会利用する企業が進出してきていることは、今後の宇宙ビジネスの拡大を感じさせられました。
Exhibition
エキシビッションもメインイベントで、各国の宇宙機構・様々な宇宙企業がブースを出展し、会社紹介やネットワーキングを行えます。私もたくさんの企業を訪問してみました。ここでは特に抜粋した会社を紹介します。
AIRBUS
AIRBUSは航空機を作っているヨーロッパの巨大企業ですが、宇宙分野にも進出しており、高分解能の地球観測衛星Pleiadesの画像は世界トップレベルです。今後も新規衛星を数多く打ち上げ予定とのことで、楽しみです。
HEAD
HEADグループは中国に本社を持つ衛星ベンダーで、ヨーロッパにも進出しています。中国で打ち上げている地球観測衛星の画像を販売しており、日本ではなかなか見る機会が少ないですが、非常に良い性能を持っていたので、今後も追跡していきたいです。
Planetek
Planetekは衛星画像を用いたソリューションをしている企業で、今回参加している企業の中ではとても珍しかったです。主な対象は環境モニタリング、インフラ監視、農業などでした。イタリアでは他にも衛星利用を目指している企業が来ており、国としてニーズが高いのかなと感じました。
Closing Ceremony
最終日は閉会の挨拶と、宇宙分野での功労者に対する授与式が行われました。日本からも東大の先生方が受賞されていました。
所感
今回は宇宙分野で最大規模の国際学会IACに参加しました。膨大な数の企業紹介と研究報告は、宇宙産業の拡大を実感し、今後ますます発展する分野であることに胸が踊りました。また、コロナ禍以後初のオンサイトでの参加でしたが、実際に現地に滞在して交流することはモチベーションの向上と大きな経験になりました。宇宙ビジネスに関心のある当社としても、今後も宇宙産業のキャッチアップを継続していきたいです。