The Things Conference 2023 現地リポート番外編(2/2)
(前編はこちらから)
翌日の土曜日朝早く、アムステルダム中央駅のプラットフォームでスキポール空港行きの電車に乗り込みました。月曜の帰国便まで時間があるので「クリーンエネルギー推進国オランダで最新EVを乗り倒す」ことに決め、空港のカーレンタルでEVを借りました。
事前に「TESLA Model 3」を予約していたのですが、車が手配できなかったとのことでチェコの自動車メーカーSkoda(シュコダ)のENYAQが私の相棒になりました(正確には「TESLA Model 3 “or Similar”」で予約していたので文句は言えない)。
自動車産業が盛んで多くの自動車メーカーがしのぎを削るヨーロッパですが、ここオランダでもテスラは大人気。驚いたのはスキポール空港に停車しているタクシーがすべてテスラ製だったこと。レンタカー会社のカープールを見渡しても他メーカーのEVはたくさんある(≒稼働率が低い)のに対し、テスラはほとんど見かけないといった具合でした。
慣れない左ハンドルに戸惑いつつ、ほぼノープランでオランダ北部にある巨大堤防ズイダーダムを目指し北上しました。途中、風車村で有名なザーンデイクやエダムチーズ発祥のエダムなどに立ち寄ります。思い付きで気になった街に立ち寄れる気軽さは自動車ならではです。
オランダの大部分は海抜0m以下なので、常に洪水災害と隣り合わせにあります。「ズイダーダム」は、北海を何kmにも及ぶ巨大な堤防でせき止め湖を作ることにより洪水被害を軽減するというとてつもなく大規模な土木事業です。堤防には電車や高速道路が通り、オランダ南北の重要な交通ルートになっています。写真は湖側なのですが、波が穏やかで多くの漁船やヨットが見えました。
オランダ北部を半周ほど走ったところで、バッテリー残量が気になり充電することにしました。充電スポットは至る所にあるのですが、「少なくなったら簡単に充電できるだろう」と軽く見ていた私の手落ちで「充電カード」を用意していなかったため、充電できる設備がありません。ゲスト給電可能(充電カード不要)なスタンドもあるぞと他のEVユーザから聞き出し、周辺を探し回ることに。
走行可能距離70kmを切ったところでマクドナルド併設の充電スタンドがゲスト給電できることを知り安堵したのも束の間。給電容量が小さいため十分に充電されるのを待っていたら日が暮れてしまいます。オランダ周遊はあきらめて車を返却することも考えましたが、アムステルダムまで約120kmあり、すでに後戻りできない状況ということが判明。ここでの充電は最低限に留め、予約していた宿で作戦を立て直すことにしました。これだけEVが普及しているオランダで、まさか内燃機関が恋しくなるとは思いもしませんでした。
気持ちを切り替え宿へチェックインします。AirBnBで見つけた、あたり一面牧草地に囲まれたオランダの伝統的な三角屋根の家です。オーナー夫婦は1Fで暮らしており、2Fを丸々使わせていただきました。ホームメイドのバター、ヨーグルト、ジャムの他、放し飼いの鶏の卵などをいただくと心が暖まり、これまでの旅の疲れが一気に出て寝落ちしてしまいました。
もう1泊したい気持ちを引きずりながら、美しい田舎町を後にします。近くにゲスト給電可能な高出力の急速充電機があるという情報を得て、朝早く出発しました。
写真はオランダを中心に展開する「FASTNED」の急速発電機です。テスラのスーパーチャージャーが250kW出力なのに対し最大300kWの高出力が可能です。未来感ある筐体もそうですが、モバイルアプリもしっかりデザインされていました。
FASTNEDの急速充電機は、高速道路のパーキングエリアをメインに展開されているようでした。施設の屋根は全面ソーラーパネルです。テスラもそうですが、こうした一貫したユーザー体験が人を引き付ける魅力になるのではと考えます。
バッテリー残量を気にせず走れるレベルまで充電した後、オランダ南部を周ることにしました。ミッフィーの作者ディック・ブルーナの故郷ユトレヒト、ゴーダチーズ発祥の地ハウダ<Gouda>、ロッテルダム、ライデンなどなど。
北部は酪農が盛んで牛や馬、羊などを観る機会が多かった一方で、南部はコーンウォールやジャガイモ畑など耕作地が多かった印象です。
帰国を翌日に控えていましたので、この日はスキポール空港からほど近い閑静な住宅街をAirBnBで予約しました。2日間で600kmほど走り、ざっくりオランダ1周したわけですが、
- (他国も同様ですが)利用したい時に利用できる急速充電機が圧倒的に足りない。
- UIなどトータルで見て、やはりテスラが頭一つ抜けているという印象。
- 充電規格が統一されていないという点は、まだまだこれから。各国の政治如何な感じがする。
- 移動コストはEVが圧倒的に有利(ただし前述の充電問題がクリアできれば。なお、オランダのガソリン価格は世界トップレベルで、日本が安く感じるほど高い)
などなど身をもって感じたのでした。
パンデミックが明けオーバーツーリズム緩和に頭を悩ます行政、迫りくる自然災害、進むクリーンエネルギーへの対応、世界全体でますます広がる2極化・・・。旅を「情報を消化するためのもの」と捉えがちな昨今。変化することに対して消極的な日本に留まらず、激変する世界に目を向け足を運び、もっとたくさんのこと・言葉にできない経験を積んでいきたいものです。