The Things Conference 2023 現地リポート番外編(1/2)
前回のポストでは、「The Things Conference 2023」について現地レポートをご紹介しました。今回は、番外編として現地滞在記をお届けします。
COVID-19によるパンデミックで渡航を控えていた人たちが一斉に動き出した影響か、空港は混雑気味。カウンターで話を伺うと、多くの便が満席に近いとのこと。航空券は円安も手伝って軒並み値上がりしており、日本から「数万円でヨーロッパ周遊」できるような時代はすでに終わったのだな、と感じます。今回、チケット手配の都合で上海を経由しオランダの玄関口であるスキポール空港に到着したのですが、自宅を出発し宿泊先に着くころには丸一日が経過しようとしていました。
電車とトラムを乗り継ぎアムステルダム市内に入ると、ヨーロッパに来たことを感じさせる古い街並みが広がります。私自身、10年ぶりのヨーロッパということもあり心が躍ります。翌日にカンファレンスを控えていますので、街へ繰り出したい気持ちを抑え宿へチェックインしました。
昨今、世界各国の観光地で「オーバーツーリズム」の問題が叫ばれていますが、ここアムステルダムも然り。これまで観光大国としてインバウンド獲得のためのさまざまな前衛的な施策が行われてきましたが、今や増え続ける観光客をどうコントロールするか?ということに焦点が当てられているようです。観光税の値上げという話も聞きます。宿泊施設への規制もこの一環で、市内の客室料金が高騰。例えば個室のホテルに1泊する場合、最低でも30,000円程度は覚悟しなければなりません。よくバックパッカーが利用する4~16人の相部屋(いわゆるホステルやドミトリー)でも1泊10,000円程度という具合でした。
なるべく費用を抑えつつ、安全に泊まれそうなところを探していたところ「CityHub Amsterdam」という面白い宿を見つけたので泊ってみることにしました。ここは日本でもおなじみのカプセルホテルをヨーロッパ風にアレンジしてIoTで味付けしたような宿泊施設です。特徴としては
- ホテルとドミトリーの中間くらいの価格設定
- 既存の建物を活かした機能的でおしゃれな館内
- 無人チェックイン機でスムーズなチェックイン。RFIDタグが埋め込まれたリストバンドに宿泊者情報を書込み、それがルームキーに
- 部屋の照明は専用アプリでコントロール。ムードを変えたり起床時間に合わせた明るさを設定可能
- 質問やリクエスト、街の情報などはチャットでやりとり(すぐに返答が来ます)。チャットで対応してくれるスタッフ本人がロビーで待機しているので、直接話を聞くことも可能。
など、ITとIoTをうまく活用してオペレーションを省力化しつつ、ケアすべき部分はしっかりカバーされていて、合理的なオランダ人らしい新しいスタイルの宿でした。これから同形態の宿が増えていくような感じがしました。部屋は2畳程度で広いとはいえませんが、遮音性が高くゆっくり休むことができました。若いカップルやグループの宿泊者が多かった印象です。
翌日は少し早起きし、朝の街を散策しながら「The Things Conference」の会場へ向かうことにしました。アムステルダムの公共交通といえば、自転車と街中に張り巡らされたトラム網でしょう。
上の写真はトラムの停車駅なのですが、自転車専用道とトラムの線路しかなく、このような道路では自動車はトラムの間を縫って走らなければならず非常に肩身が狭いようでした。停留所の屋根は植栽として利用されています。トラムのチケットは1回の金額ではなく時間ごと(時間内なら乗り放題)の課金で、支払いはクレジットカード・デビットカードのみ。キャッシュは使えません。
街の至る所でオランダ人らしさが垣間見え、散策しているだけで楽しいです。
カンファレンス会場はアムステルダム北部、アイ川のほとりにあります。アムステルダム中央駅から無料のフェリー(渡し舟)が出ているので乗ってみました。フェリーには自転車やバイクなども乗せられ、生活の足として使われています。運河が張り巡らされたアムステルダムならではの光景です。
カンファレンス終了後、カンタを見つけました。カンタ(CANTA)は、オランダの自動車メーカー「Waaijenberg Mobility(ワイエンベルフ・モビリティ)」が製造する超小型の電動車です。市内はとにかく車に対する風当たりが厳しいので、こうしたマイクロモビリティが重宝されるのも理解できます。ちなみに免許不要で運転できるそうです。
後日、HONDAエンジンを積んだ内燃機関モデルのカンタも見つけました。(写真左)
建物を観察すると、上にフックがついた建物ばかりということに気が付きます。市内の建物は長屋のように奥行きがあり、鉛筆のように細長く、とてつもなく急勾配の狭い階段です。そのためフックを使って大型家具や家電などを吊り上げているとのこと。それに加えて、建物が傾いているように見えるのは、古いから傾いているのではなく傾きを付けることで、吊り上げる時にぶつからないようにしているのだそうです。
最近では、上の写真にあるような「ハウスボード」での自給自足生活が人気ということでした。今回、訪れることはできませんでしたが、市北部の「Schoonschip」と呼ばれるコミュニティも注目を集めています。
(参考:未来のための実験都市。水の上に暮らす「Schoonschip」プロジェクト。)
次の宿泊先は、中心市街地から少し離れた場所にある「VolksHotel」にしました。ここもカプセルホテルに近いのですが、CityHubとは少し毛色の違うファンキーさがあります。サービスは質素なものでしたが、宿泊者同士が自然と交流できるような不思議な空間づくりがされていたように思います。
ここでも感じた「シンプルなサービス・必要十分な設備・特色ある空間づくり」は、何か次へ繋がるキーワードのように思えてなりません。
カンファレンス2日目の朝早く、会場へ行く前に市街地を散策しました。昨日訪れた日中のアムステルダム中心街は、まっすぐ歩けないほど多くの観光客でごった返しており、とても街歩きする気分になれませんでした。天気が良いので中央駅まで5kmほど歩くことにしました。
川沿いの駐車場には必ずと言っていいほどEV充電器が設置されており、たくさんのEV車が繋がっていました。またその多くがカーシェアリング向けの車輛でした。
街の至る所で見かける「XXX」は、市を表すシンボルといえます。アムステルダム市の市旗にも使われています。
マクドナルドやKFC、スターバックスといったメガチェーンも街に溶け込んでいます。
観光スポットとして有名なダム広場。日中の喧騒が嘘のように静かで美しく、街行く人もまばらで挨拶を交わす余裕もあります。すがすがしい気持ちでカンファレンス会場入りし、2日間の日程を終えました。
(後編に続く…)