ドーナツアンテナで遠距離受信を実現する
変な名前のアンテナを発見
aliexpress にドーナツアンテナという面白い名前のアンテナが出ていたので、中波用の赤色のもの、短波用の青色のものを買ってみました(図 1)。ドーナツ状の基板にプリントしたコイルとバリコンを組み合わせた同調回路になっているようです。待つこと 5 日ほどで深圳から届きました。このアンテナを前回作成した Si4732 DSP ラジオに取り付けて遠距離受信をしてみました。
ドーナツアンテナをテスト
届いた 2 種類のドーナツアンテナのプリントパターンを追って調べたところ、コイルの中間タップをスイッチで切替えることでコイルの巻数を変えて受信(共振)周波数の範囲を切り替えるようになっていました。また 2 連バリコンが並列に接続されていました。スイッチを切り替えたりバリコンを回したりすることでアンテナに表示されている以下の周波数に合わせることができるようです。
- 中波用の赤色アンテナ
- スイッチ=LOW 時 500kHz ~ 1MHz
- スイッチ=HIGH 時 1MHz ~ 2MHz
- 短波用の青色アンテナ
- スイッチ=LOW 時 4MHz ~ 12MHz
- スイッチ=HIGH 時 12MHz ~ 24MHz
ところがディップメータで共振点を調べたところ、短波用の青色のものはほぼ上記のとおりでしたが、中波用の赤色のものは共振点が見つかりませんでした。スイッチなどの部品を取り外しプリントパタンを追ったところ、スイッチが回路に接続されておらず、パタンミスがあるようでした(回路図 1)。
赤色アンテナの修正
パタンミスのある中波用赤色アンテナの修正方法です(図 2、図 3)。なおスイッチの下になって見えませんが、プリントパタンを 1 か所切断する必要があります。アンテナからの出力を SMA コネクタで取り出すようになっていましたが、ケーブルの脱着が面倒なので、ヘッダピンをとりつけました(回路図 2)。最後に nanoVNA で共振の様子を目視で確認しました。共振点では回路のリアクタンス X が+から-に急に変化するので、上記の周波数範囲における X の変化を表示させました(図 4、図 5)。バリコンを左右に回すと変化点が左右に移動します。
アンテナからの入力回路
並列共振回路の出力は高インピーダンスなので、高いインピーダンスで受けることができるように FET 一石のアンプを設けました。少し前ならば 2SK241 が使えたのですが、入手難となってしまったため、秋月電子で入手できる BF256B という J-FET を使用しました。ソース抵抗に流れる電流が 1mA 弱となるように抵抗値を選びました(回路図 3)。入力回路の実装では以前作成した DSP ラジオのバッテリー基板の空いているスペースに組み込みました(図 6、図 7)。
遠距離受信を試す
夜間の中波遠距離受信を試しました(図 8)。関東から私の田舎である広島の RCC 中国放送(1350kHz、20kW)でのカープの野球中継がよく受信できました。周期の長いフェージングで時々落ち込むことはありましたが、試合の様子がよく聞き取れました。バリコンで同調点を探るコツは、DSP ラジオでは目的の放送局の周波数に近い放送のない周波数を選び、バリコンを回して受信ノイズが最大になる点を探ることです。次に DSP ラジオで目的の周波数を選べばほぼ最適なチューニングになります。
短波用の青色アンテナの方は 7MHz 帯 SSB のアマチュア無線の交信がよく聞き取れました(夕方、早朝がコンディション良好です)。バリコンを速く回すと急峻な同調点が現れますので、ゆっくり回すことがコツです。