秋月DAC付きデジタルアンプ基板の改造
はじめに
秋月の2階で600円で売られている安価なデジタルアンプ基板には、ハイレゾ音源対応の24bitDACが付属しており、興味半分で入手していました(https://akizukidenshi.com/catalog/g/g102404/)。
PCのUSB端子に接続してPCオーディオを実現することを想定した基板構成になっており、TRIPATH社製デジタルアンプICのTA1101B、USB電源5Vを12Vに昇圧してデジタルアンプに供給するLT社製スイッチングレギュレータICのLTC1735、USBインタフェースを持つMICRONAS社製DACのUAC3552Aが搭載されています。
他の工作で使っていたタカチの古ケースYM-100がジャンク箱にあり、デジタルアンプ基板がぎりぎり入りそうだったので、このケースを再利用してデジタルアンプを作ってみることにしました。なお、Web上ではすでに本基板の利用や改造に取り組まれた方の情報があり、これらも参考にさせてもらいました。
作るデジタルアンプの要件
高さ30mm、幅100mm、奥行70mmのサイズのYM-100に収めることを前提に、以下の①、②のどちらでも動作するようにしました。
①PCオーディオ用のアンプとしてUSB電源で動作する
②LINE入力によるアナログソース用のアンプとして外部DC12V電源で動作する
基板の改造箇所
①、②を実現するために基板に以下のような改造を加えました。
(1)デジタルアンプのミュート状態の解除
②のため、デジタルアンプを常に稼働させミュート状態にならないようにします。解除方法については次のサイトを参考にしました(https://kyoutan.jpn.org/uts/pc/akizukiusbaudio/)。
(2)電源系統の見直し
基板の元々の電源系統では、USBから供給される5Vを12Vに昇圧した後、デジタルアンプIC、およびさらに三端子レギュレータで5Vに降圧してDACに加えていました。DACは110mA程度消費するようであり、(12-5)×0.11=0.77Wが三端子レギュレータで熱となり無駄です。そこで三端子レギュレータを廃止し、DACにはUSBの5Vを直接供給するように電源系統を改造しました。
(3)スイッチングレギュレータICシャットダウン機能の追加
②では外部12V電源を使用します。USBケーブルが接続されUSBからも給電されている場合、電源が競合しないようにスイッチングレギュレータICの動作を止める必要があります。本ICにはシャットダウン端子があるので、外部電源による12Vを検出したら、シャットダウン端子を制御してICの動作を止めるようにします。レギュレータ出力にはICへの入力電圧である5Vが出てきますが、出力に繋がるダイオードにより逆流は阻止されます。
(4)LINE入力切替機能、ボリュームの追加
DACのオーディオ出力とデジタルアンプの入力の間には、元々4.7uFのカップリングコンデンサが挿入されています。このコンデンサを外した後のパッドにLINE入力切替回路とボリュームを挿入します。DACのオーディオ出力のカップリングコンデンサには取り外した4.7uFを再利用します。3.5mm径のスイッチ付きステレオジャックでDACからのオーディオ信号と、3.5mmステレオプラグを接続して供給される外部アナログ信号を切り替えます。この信号はAカーブ2連50kΩボリュームを経由し、デジタルアンプ入力に2uFのカップリングコンデンサを介して入力されます。
この回路をテストした結果、デジタルアンプ入力のカップリングコンデンサの値に注意する必要があることが分かりました。当初10uFを使用していましたが、これだとデジタルアンプ電源ON時にものすごいポップ音が出ます。コンデンサの容量値を変えてみると、1uFではほぼ無音となりました。データシートには2.2uFを使用した参考回路が載っていたので、手持ちの関係で2uFとしました。値が大きい方が低域特性がよくなると思っていましたが、データシートの値は結構重要であることが分かりました。電源ON時のカップリングコンデンサへの充電電流が影響しているようです。
回路図
上記改造を反映した回路図を図1に示します。なお、改造箇所に関係する部分のみを記載しており、各ICまわりの回路をすべて記載していない点に注意願います。
ケースへの組み込み
基板改造の様子、ケース組込の様子を写真で示します。
写真1:ケースに穴あけ等の加工をし、USBmicroBコネクタ、外部12V電源用コネクタ、LINE入力コネクタ等を取り付けた様子
写真2:ケースに取り付ける前の基板表側の様子
写真3:ケースに取り付ける前の基板裏側の様子
写真4:DACとデジタルアンプIC間のカップリングコンデンサを取り除いた後、LINE入力を切替える3.5mmステレオジャックへの接続部、ボリュームからデジタルアンプへの接続部を拡大した様子(お薦めの方法ではないが省スペースのためチップコンデンサを立てて使用している)
写真5:基板をケースに組み込み、結線が完了した様子
音だしの様子
写真のスピーカは古いPC用スピーカですが、USBからのデジタル音源、MP3プレーヤからのアナログ音源ともにクリアな音が出ました。
写真6:デジタル音源再生の様子
写真7:アナログ音源再生の様子