LoRaWAN対応 やわらか無線センサー ハッテトッテ®️で室内環境をセンシング ~ Part I
※本ブログは、DIC 株式会社(以降、DIC 社)様協賛による企画記事です。あらかじめご了承ください。
コロナ感染防止策としての”密”の把握、頻発する大規模災害への迅速な対応、少子高齢化による家族・地域社会の役割見直しなど、身近なところに様々な社会課題があります。無尽蔵に働ける人がいて、無尽蔵に予算があれば、解決策も多岐にわたると思います。
実際には、生産年齢人口や税収入の減少から、投資可能なリソースは非常に制限されつつあります。このような中、いかに効率よく、かつ低コストで、”モノ”をセンシングし、有益な”コト”につなげていくかが、非常に重要になります。
今回は、3 部連載企画として、屋内空間の状態を手軽に効率的にモニタリングできるデザインコンシャスな LoRaWAN 対応屋内温度・湿度・照度センサーデバイスハッテトッテ® のご紹介をしていきたいと思います。
第 1 回(本投稿)では、LoRaWAN 界隈の動向、 ハッテトッテ® の製品概要紹介、実際に利用する際に必要なモノの概要について触れます。
第 2 回では、ここで紹介しするモノを使って、ハッテトッテ® のデータを可視化するための準備をします。
第 3 回は、いよいよ IoT の醍醐味の可視化です。そして、それまでに触れられなかった Tips や補足的な情報をお伝えします。
1. はじめに
長距離通信が可能で、かつ電池駆動で数年以上も動作し続けられる低消費電力性能。
この二つがあると、IoT を実装できる用途が広がることは、想像に難くないと思います。このように IoT に適したワイヤレス通信を用いた技術・ソリューション分野を、LPWA (Low Power Wide Area) Network と呼びます。LPWA Network は総称で、複数の技術・仕様・規格が存在します。それぞれ特徴があり、実現すべき課題や実装上の制約から、適切なものを選ぶことになります。
LPWAN は、大別すると2種類あり、免許が不要な通信帯域を利用するもの、免許が必要な通信帯域を利用するものに分けられます。前者の代表的なものとしては、LoRaWAN、Sigfox、ELTRES、ZETA などです。後者は、LTE-M と NB-IoT です。なお、執筆時点で、国内においては、NB-IoT はソフトバンク社のみ提供している状態です。
当社としては、世界的にコミュニティが急拡大し、出荷モジュール数も極めて多い LoRaWAN に着目しています。Linux に代表されるように、ソフトウェア業界ではオープン性の重要性に早くから気づき、国・企業などの枠を超えて、コミュニティを作り、そこでソフトウェアやその利用用途を育てていくという営みが長く続いております。
LoRaWAN もこのオープン性を帯びており、自身で LoRaWAN 網を築き、自身で IoT の基盤として活用していくことが可能です。これこそが、世界的にコミュニティが加速度的に拡大している理由だと思います。当社でも、LoRaWAN 基地局を屋内・屋外、いくつかの場所で設置し、利用できるようにしております。
欧米諸国には遠く及びませんが、日本国内でも少しずつ LoRaWAN の空気感が漂い始めたように感じます。昨年 11 月に開催された展示会 ET & IoT 2021では、日本で初めて LoRa/LoRaWAN 関係各社が一堂に集ったLoRa Pavilion 2021 ブース(Semtech Japan 社主催)が出展されました。日本では、非常に意義深い出来事だったと思います。
本ブログ協賛の DIC 社も、LoRa Pavilion 2021 にも出展した企業の1つで、LoRaWAN 対応の製品であるハッテトッテ® を展示していました。非常にユニークな部分がある製品で、本連載で、商品の特徴と、その使い方について触れていきたいと思います。
2. ハッテトッテ® の製品概要
当社は、研究開発の一環もあり、海外から(使える使えないに関わらず)も LoRaWAN 製品・モジュールを多くの購入しています。調達した企業の国だけでも、アメリカ、オーストラリア、オランダ、マレーシア、スウェーデン、ドイツ、スイス、ブルガリアなど多岐にわたります。それらの製品群と比べても、DIC 社のハッテトッテ® が非常に特徴的な点は、その”見栄え”と"触感”です。
まず、ご覧の通り、非常に薄いです。薄いカードケース程度ですね。この中に、マイコン基盤やコイン電池(CR3032 2 個)が含まれています。
そして何より、画像からは伝えられないのが残念ですが、"触感“です。とても柔らかい触感で、まるで絹ごし豆腐のような、というと大袈裟ですが、ぷよぷよしています。
この IoT デイバイスっぽさのない特徴的なデバイスで、温度・湿度・照度をセンシングできます。製品裏側に両面テープがあり、それを剥がして壁面等に設置するだけ。非常に重要なことですが、誰でも簡単に現場設置が可能です。
以下、主なスペックです。詳細は、製品サイトをご覧ください。
3. ご紹介するデモ構成
デザインコンシャス感に圧倒されるハッテトッテ® で計測される温度・湿度・照度データを、どのように取得し、どのように可視化するのか?を簡単に説明していきたいと思います。
LoRaWAN に慣れ親しんでいない方の場合、非常にわかりづらい部分もありますが、一度わかってしまえば簡単です。そして、既製品をうまく組み合わせることで、開発せずに低コストで強力な IoT 基盤が手に入ります。ぜひ、試してみてください。
3.1. LoRaWAN アーキテクチャとは?
まず、LoRaWAN で IoT する場合の全体構成を説明します。
この図は、世界最大の LoRaWAN コミュニティ The Things Networkに掲載されているものです。 書いてある通り、エンドノード、ゲートウェイ(基地局)、LoRaWAN ネットワークサーバ(LNS)、アプリケーションサーバから構成されます。
エンドノードは、現場に設置されたセンシングデバイスです。ハッテトッテ® はエンドノードです。 複数のエンドノードは、電波の届くゲートウェイを経由して LoRaWAN ネットワークサーバとやりとりします。LoRaWAN ネットワークサーバ(LNS) が、LoRaWAN ネットワーク網のもろもろの制御をする根幹の親分です。アプリケーションサーバは、http(s)/mqtt(s)で LNS から外側にデータを飛ばす先であり、ここからはいつもの IT の世界です。
3.2. これから作るデモの構成
本連載では、それぞれについて、次のような製品・サービスを利用します。
3.2.1. ゲートウェイ (基地局)
当社 EC ショップ等で個人でも購入可能な普及版ゲートウェイの名機 Dragino 社製 LPS8-JPを使います。
3.2.2. LoRaWAN ネットワークサーバ
コミュニティTheThingsNetworkにアカウントを作るとで無償で利用できるThe Things Stack Community Edition(通称、TTN V3)があります。今回はこれを利用します。 なお、The Things Stackは、OSS として公開されています。自身のマシンにインストールして、利用することも可能です。
3.2.3. アプリケーションサーバ
LoRaWAN の世界に限らず、手軽にデータを可視化する SaaS がいくつも存在します。今回は、エンドノード 5 台まで無償利用可能なTago.ioを利用してみます。
第 1 回はここまでとしたいと思います。次回(第 2 回)では、実際の機器・サービスの設定をして、データを可視化するための準備をしていきたいと思います。